チラシの裏は意外と白くない

チラシの裏にも書けないような毎日

ハンター試験

ついにこの日が来てしまった、アナウンスがあった1月以来、2015年最大の難関とも言うべき年次研修の日である。なぜこんなにも行きたくないかといえば、プログラムにグループディスカッションが含まれていることも原因の一部ではあるがそれはごく一部、同期とそれほど仲良くないからである。別に特別仲が悪いわけではない、とりたてた理由があるわけでもない、ただただよく顔を合わせる顔見知りくらいの関係だ。入社直後こそは全員がはじめまして、そこから関係を構築するに当たりここまで差ができてしまったわけだ。要するになんとなく馴染めなかったのだ、水が合わない。話してる内容も表面的でつまらなくはないけど、おもしろくもない、というか君たちは趣味とかないのかね?という感じだ。ある研修が終わればなにかと飲み会、給料が出ないのに会社の人とすすんで飲みに行く理由がわからない。こんな感じに加え、同期の7割くらいが寮で共同生活をしているとくれば、こんなん仲良くなれる方がおかしいっすよ、である。別に周りが俗人的で、自分が特別だなどとは思っていない、むしろ自分が変な部類で周りが標準なのだろう。が、部活や趣味にどっぷり時間を費やす人たちと一緒にいると、彼らが異常に見えてしまうのだな。

と、ひとしきり同期と仲良くなくても仕方ない言い訳を並べたて久しぶりのいと小さき街へ。参加人数ギリギリの収容人数かつ自由席という会場は極めて難易度が高い。会場への到着時間が鍵を握る、言い換えれば家を出る瞬間から戦いは始まっているのだ、おお、こう考えればハンター試験のようでいくぶん愉快ではないか。冴えない同期に変なジュースもらっても飲まないようにせねば。

今日の作戦はこうである。開場直後のガラガラの時間帯に突入、空いているであろうやや前よりの席を陣取る。あとはひたすら仕事をして休み時間全てを凌げば、いずれ定時の鐘がなることだろう。まだお昼ご飯をどこで食べるかといった課題もあるが、不確定要素が大きいためとりあえずは朝の陣取り合戦に全力を注ぐことにする。

開場とほぼ同時にいと小さき街に降り立つ、すでに意識の高い同期がコンビニでご飯を買ったりしているではないか。残りHPわずかな手持ちポケモンポケモンセンターに連れて行く時のごとく、気づかれないよう目線を合わせないよう気配を消してなんとか会場へ。ここまでは想定通り。あとは入り口で偶然、無害な同期と遭遇してそのまま会場入りがベスト…!と、入り口で隣の部の同期に遭遇、彼も割と僕に近い人種のため、こいつはラッキー、僥倖である。

そのままの勢いで会場になだれ込む!人気のない机に陣取る…机…ないっ…!想定外っ…!絶対的自由席っ…!ぐにゃぁぁぁ
机はゼロっ…!そこにあるのはっ!スクリーンを取り囲むおびただしい数のイスっ…圧倒的同心円っ!!

これはまずい、机形式以上に陣取りが重要だ。一日の明暗を分けると言っても過言ではない。やはりハンター協会(人事部)主催の最期の年次研修、ただでは済まさないということか。入り口で遭遇した同期とは別の席に着くつもりだったが、状況は一変。安全牌でそのままその同期の隣に滑り込む、あとは右隣がどうなるか、である。

右隣がどうなるか、できるだけ観測しないようにして、感じ悪くメールチェックに徹する。少なくとも左隣の同期は相手をしてくれるだろうので、後は野となれ山となれ、だ。しかしハンター協会、机無しという電撃作戦で資源難になったのか、右隣にはこれまた比較的近い部署で、わりと分け隔てなくしゃべれる同期が着席。勝った…!賢明な読者諸君は左隣の同期がその左隣と、右隣の同期がその右隣と会話をはじめて、僕1人取り残されないか心配されていることと思うが、心配ご無用、いたずらに左隣の同期のみでその場所を選択したわけではなく、右端から2番目という位置に大きな意味がある。つまり右隣、すなわち右端の同期は僕と喋るか、沈黙するかしか選択肢がないわけである。この多重の作戦、孔明も一目おかずにはいられないことであろう。

こうして、安息の地を手に入れることに頭を使いすぎたので、研修の内容はボンヤリしか覚えていない。偉い人にがんばれと言われ、自分の苦労話を同期に披露するというのが大まかな内容であった。ボンヤリと仕事をしているのでそんなに話すネタもなく、代表としてハンター協会に買われた同期の素晴らしいプレゼンを聴き、この人たちはすごいけど日々のストレスで不健康になったりしないのかなと余計な心配をして午前中はおしまい。

二次試験は昼食。今日も弁当持参のため、食堂に行く大半の同期と行動を異にする。つまりマイノリティである弁当仲間を見つけ、同席するというのが試験の趣旨である。が、これはあっさりクリア、左隣の同期がコンビニ弁当派だったため、そのまま流れるように同じテーブルにつき、ボチボチの話をして二次試験も無事突破。

午後は特別ゲストと午前より偉い人の話を聞き、最後に総括、終了である。が、これで安心してはいけない。そう、当然のように企画された飲み会の開始を待つ、これまた当然のように参加する同期ほぼ全員をやり過ごし、会場を離脱するという最終試験である。100人近い衆人環視の下会場を離脱する、まさに最終試験にふさわしい課題ではないか。
しかしこれに関しては完全に想定の範囲内、対策済み、これまで何度も脳内シミュレーションを繰り返してきた言葉を頃合いを見計らって放つのみ。

「旧居室に忘れ物をした可能性があるので立ち寄らなければならない」
嘘でもなんでもない、紛れもない事実のため後ろめたさはゼロ。同期は止められるはずもなく。しかも旧居室のある建物は飲み会会場とは逆、完全勝利である。気のいい同期の、じゃあまた後で〜が妙に心に刺さるが、ここで意志を曲げてはならない、ダメ絶対。これまでならホイホイ騙されてきたが、もう社会に出て3年、社交辞令は弁えているつもりだ。あなたが飲み会中ずっと僕の相手をしてくれるというのなら話は別だけどという言葉を飲み込み、愛想笑いでごまかし旧居室へ。よく考えたら、そう言われたら言われたでそれはそれでつまらなさそうだな。

そんな訳で最終試験をクリアし意気揚々と旧居室へ。これで忘れ物があれば言うことなしなのだが、そうは問屋が卸さず。まあよい、捜索願の一つや二つ、甘んじて提出しようではないか。今日の大勝利に比べれば屁でもない労力だ。

そんな訳で早帰り、趣味が捗るが雨上がりで自転車は乗れなさそう。今日はピアノにして、明日がんばって早起きしよう。