チラシの裏は意外と白くない

最近忘れっぽくなったので調べたことをチラシの裏に書きます

見ず知らずの人のお通夜にいく

夜中、父がどこかに電話している声で目が覚めた

尿意を感じてトイレに起きたところ、和室に布団が敷き詰められいて、見ず知らずの人たちが10人近く寝ている。なかには着物姿のおばあさんもいる

トイレまでの動線確保が大変だ。一体何事なんだろう

 


トイレから戻ると、人々が起き出してきている。先程は気づかなかったが男性はスーツ姿だ

 


自室に戻ると、部屋が勝手に片付けられていてゴミが外に出されている

ビールの空き缶はキッチンに出されている。また母に嫌味を言われると考えるとうんざりだ

なぜか整理整頓までされていて、自分のものが一体どこにあるのかわからない

 


起き出した人々とうちの家族との会話から、どうやら、

・妹の旦那の親族が亡くなったらしいこと

・会場の都合で、明け方に出発すること

・寝ていた人は早朝出発に備えて前泊している向こうの親族らしいこと

がわかった


いよいよ出発の時間だ

だが、携帯が見つからない。整理されたときにどこかにやられたのか?隠されたのか?

時間がない。持って行くのは諦めるしかないか

 


スーツに着替えて玄関に向かうも、今度は革靴が見つからない

探しながら革靴の利便性のなさをディスりまくった

高くて手入れが必要で歩きにくい

しかし残念ながら誰からも同意を得られない。いつものことだ

 


靴を探している間に、向こうの親族がどこかから車を借りて来た

もともと電車で行くと言う話だったが、革靴探しに手間取っている間に、うちの車と二台体制で式場に行くことにしたらしい

 


ようやく革靴が見つかったが、長く手入れをしていないためにボロボロだ

さすがにみすぼらしいので、道中で調達することになった

 


玄関を開けると雨だ。それも豪雨。そのこともあって車でいくことに変更したのか

当然だが向こうの親族ばかりなので、うちの車にも何人か向こうの親族が乗り込んでいる

見ず知らずの人を乗せて運転するなど気が重い

 


ところで携帯がないから、今日、会社を休むことを連絡ができないのだった

なんで前もって直接教えてくれなかったのか尋ねると、昨晩はお前が部屋で酒飲んでいたから言いづらかったのだと逆におこられた

そう言う問題ではないのではないか

大体そうならば晩酌のアルコールが抜けきっている保証もないのに、車を出せなどとよくいえたものだ

 


父がカメラを持ってきた。式が終わったら集合写真を撮るつもりらしい

それならいいカメラを持っていってはどうかと一眼レフを渡す

携帯は見つからないのに、カメラはすぐに見つかった

 


いよいよ出発だ

道中、早朝でも営業しているスーパーを見つけたので、店の前に車をつける

開店前ということで、駐車場と一階の一部の売り場だけが営業しているようだ

革靴を見つけた。7万ちかくもする

革靴なんて好き好んで履かないのだから、もっと安いもので十分と思ったが、ブランドものでお買い得だからと母に強力に勧められる

どうでも良くなったので買うことにした

合うサイズが在庫しているといいのだが

 


自分のサイズの箱が見つかった。次は試着だ

靴箱の中にはやたら緩衝材が入っていたので、靴を取り出すのに苦労した。

どうせ多少合わなくても買わざるを得ないのだ、と半ば開き直って取り出したところ一部の包装が破れてしまった

 


幸いサイズは問題ない。時間もないので、箱には戻さず、そのままレジにもっていく

店員がいやらしい笑みを湛えながらあなたには売れない、と言う

このスーパーのクレジットカードで支払う人、もしくは駐車場利用者だけのための早朝営業らしい

一般客は開店後にしか物を買えないらしい

 


購入を断られた革靴を箱に戻すが、なかなかうまく戻らない

一部梱包材を破って取り出したのだ。綺麗に戻るはずがない

 


破らなければよかったな、もしくは路駐しないでちゃんと駐車場に停めれば買えたのに

いや、そもそもちゃんと革靴の手入れをしておけばこんなことにならなかった

後悔はつきない

 


しかし理不尽だ

購入できる人が限定されるなら、入り口でチェックすべきだし、靴を取り出そうと四苦八苦してる最中にも声をかけるタイミングはあっただろうに

そもそもあの店員の腹立たしい笑顔、理不尽な態度はなんだ?

しかし、それに対して喧嘩を売らなかった自分は偉い

波風立てないのが一番だ

 


やっぱり破ったところのせいで箱が組み上がらない

もういい加減に出発せねば間に合わない時間だ。夜が明けてきた

そういえば腕時計も付け忘れてきたから正確な時間もわからない

 


先程は理不尽に対して怒らなかった自分を褒めたが、やはり違う

理不尽にたいして怒らず、ああして反射的に愛想笑いをするようだから仕事でも漬け込まれるのだ

そうだ、そもそもこの状況が全てを表しているではないか

なぜ向こうの親族のお通夜に行く段取りをうちがして

なぜ会社を休んでまで車を出さねばならぬのか

理不尽とは戦わねばならないのだ

 


などと考えながら、箱詰め作業をしていると店外から声が聞こえる

向こうの親族を乗せたクルマからだ。きっと早くしろと言っているのだ

大声出さずに電話でもすればいいものを、嫌だなああ言う人種は

ああそうか、そういえば携帯は隠されていたから、持って来るのを諦めたのだ

そしてそれは会社に連絡できず、今日は無断欠勤をするということなのだ

 


もう理不尽な箱詰めはやめよう

どのみち二度と来ないスーパーなのだ

もう店を出よう

見ず知らずの人のお通夜にいくために